
京都府京都市の世界遺産「賀茂御祖神社(下鴨神社)」は、「京都 下鴨神社展」を11月5日(水)~11日(火)に愛知県名古屋市の名鉄百貨店にて開催。
京都でも常時は目にできない品々が名古屋で特別公開され、京都・糺の森で守り継がれてきた神事・文化・造形の“現物”を、特別に見ることができる一期一会の機会となる。
下鴨神社と名古屋をつなぐ「葵」の縁
下鴨神社は、国宝の本殿2棟と53棟の重要文化財、原生林・糺の森を擁する古社であり(世界遺産「古都京都の文化財」)、日本の祭祀と王朝文化の記憶を今日へつなぐ希有な場。双葉葵に象徴される賀茂の祈りは、祭礼名そのものに「葵祭」として生き続けてきた。
名古屋は「葵の城下」であり、徳川家に連なる三つ葉葵は、賀茂社(上賀茂・下鴨)に伝わる葵の信仰と意匠に淵源をもつと広く知られている。徳川の三つ葉葵と合わせて語られる“葵の文化圏”は、京都と東海をまたぎ、意匠・信仰・礼法の各層で近世の都市文化を形づくった。「京都 下鴨神社展」は、そうした“葵のネットワーク”と文化と森の保全を名古屋で実感してもらう試みだ。
この徳川の地に、今回“下鴨”が来る必然。それは、葵祭をはじめとする“葵の文化”を原点から見つめ直す、歴史的な邂逅でもある。
2036年「式年遷宮」千年へ向けての文化継承
下鴨神社は、21年ごとに社殿を修理し御神霊を新たな御殿へ遷す式年遷宮を重ねてきた。2036年に式年遷宮制度創始から千年の節目を迎える「第35回式年遷宮」へ向けた文化継承の歩みを、世界遺産賀茂御祖神社境内糺の森保存会(糺の森財団)と、世界遺産下鴨神社崇敬会(下鴨崇敬財団)が、名古屋からも広く伝えていく。
「京都 下鴨神社展」は、文化財保護と環境保全の意義を広く共有し、千年の祈りを次の千年へ手渡すための機運醸成の場ともなるだろう。
王朝文化の美と神事の装束を展示
「京都 下鴨神社展」では、平安の古式を今に伝える下鴨神社の所蔵・伝来資料から、十二単衣、神馬装束である鞍、飾太刀など、王朝文化と神事の美を示す品々約40点が公開される。世界遺産の社ならではの文脈で、葵祭に象徴される“葵の様式”を立体的に体感できるだろう。
国宝本殿、都市型原生林・糺の森、日本最古級の神事群など、下鴨神社が守り伝える価値を、写真・映像・史料で俯瞰。世界遺産としての意義と、現代における文化継承の取り組みも紹介される。
鴨相撲の記憶と現代の奉納が交差

会場では、10月9日(木)に第74代横綱・豊昇龍関による奉納土俵入りで実際に用いられた、下鴨神社所蔵の鸞鳥・獅子・狛犬意匠による特別化粧廻しや関連資料を、名古屋で特別公開。江戸初期に糺河原で興行された勧進相撲は「京都相撲の始まり」と伝えられており、下鴨神社における相撲文化の淵源と、現代の奉納がつながる“瞬間の記憶”を見ることができる。
「京都 下鴨神社展」に出かけて、“葵”で結ばれた二都のあいだに立ち上がる歴史と文化の手触りを感じてみては。
■京都 下鴨神社展
会期: 11月5日(水)~11日(火)
時間:10:00~18:00 ※初日12:00開場、最終日15:00終了
会場:名鉄百貨店 本店(本館)10階 美術サロン/愛知県名古屋市中村区名駅一丁目2番1号
入場:無料
※展示内容・会期は都合により変更となる場合がある
下鴨神社公式HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
(山本えり)